
現在KICKSTARTERにて
「STRETCH AND BOBBITO: RADIO THAT CHANGED LIVES」
というプロジェクトが進行中ですね。
コロンビア大学内のFM局WKCRでの番組「THE STRETCH ARMSTRONG SHOW with Host BOBBITO」にまつわるドキュメンタリーを制作するためのプロジェクトだそうです。
90年代。インターネットはまだ無く「HIP HOPの本場」NYからダイレクトに入って来る貴重な情報源の一つがこの番組を録音したテープでした。
毎週木曜日の夜中に4時間にわたって放送されていたそうでSTRETCH ARMSTRONGによるDJ。そして有名無名を問わずMC達が繰り広げるFREESTYLEセッションがこのショウの売りでした。(4時間もある番組ですからFREESTYLEのくだりが入ってないテープもありました。)
特にデビュー前のNAS,BIGGIE,MAD SKILLZあたりのフリースタイルが放送された回は「神回」だったようですね。ちなみに当時はこの番組での噂とTHE SOURCE MAGAZINEでの人気コーナーUNSIGNED HYPE(デビュー前のMCを紹介するコラム)の影響力は日本でも結構あったと思います。
そんな「伝説的な番組」のドキュメンタリーだそうでとても楽しみです。
またこの番組のFREESTYLEを録音した音源はレコードとしてもリリースされています。

V.A./FREESTYLE FRENZY vol.2
vol.1は在庫がないのですがこのvol.2も素晴らしいです!
「THE STRETCH ARMSTRONG SHOW with Host BOBBITO」内でのFREESTYLEの録音を9本収録。
収録年月のクレジットがあるのでそれぞれのアーティストがデビューした年なんかを確かめながら聴くとまた楽しめます。例えば1994年にWILD PITCHからソロデビューしたO.C.のフリースタイルは1994年8月の収録。クレジットにもある通り元3RD BASSのSERCHと一緒です。この頃のSERCHはWILD PITCHで働いてたので「あー。なるほどなるほど。」みたいになりますよ。
またSTRETCH ARMSTRONGはBIG BEATで1990年〜1993年。LOUDで1993年〜1995年に働いていたそうで様々な作品に関わっているようですね。

V.A./'95 NUDDER BUDDERS
新興レーベルだった「LOUD」のレーベルサンプラー。STRETCH ARMSTRONGがフックアップし、既に"SHOOK ONES PT.II"を大ヒットさせていたMOBB DEEPの作品などを収録。ジャケットのステッカーにもあるように"SHOOK ONES PT.I"はこの盤のみです(プロモの12インチは存在します)。
MOBB DEEPは1993年に4TH & BROADWAYからアルバム"JUVENILE HELL"をリリース。"PEER PRESSURE"と"HIT IT FROM BACK"を小HITさせてはいたもののもう一つパッとしない感じだったようですね。
そこをSTRETCH ARMSTRONGが自身のラジオ番組も使いLOUDに引っ張り上げて大ヒットさせた。というのは良い話ですね。またMOBB DEEPの古くからの仲間であるBIG NOYDも一緒に引っ張りあげているところもまた良いです。

ARTIFACTS/C'MON WIT DA GIT DOWN
このレコードには直接クレジットがあるわけではないのですがARTIFACTSもSTRETCHとBOBBITOと関係が強いアーティストですね。彼らの番組によく出ていた印象もありますし、彼らの曲のインストがFREESTYLEセッションでしょっちゅう使われていた印象も強いです。
またARTIFACTSとしてのデビューシングルである"WRONG SIDE OF DA TRACKS"にはMANAGEMENTのところにBOBBITOの名前があります。
そしてARTIFACTSとしての最初の録音物が同じBIG BEATからリリースされたNUBIAN CRACKERSの"DO YOU WANNA HEAR IT?"だったことも興味深いです。STRETCH ARMSTRONGは彼らのトラックをしょっちゅうかけてました。

DOUBLE XX POSSE/EXECUTIVE CLASS
このレコードも直接クレジットはないですがいろいろと想像が膨らむ一枚です。
このシングルの後にBIG BEATからリリースされるアルバム"PUT YA BOOTS ON"ではEXECUTIVE PRODUCERとしてSTRETCH ARMSTRONGの名前がクレジットされています。
DOUBLE XX POSSEはMC SUGAR RAY & SITRANGER Dの名義でNEW JERSEYの名門(?)インディーDEF CITYからとNEXT PLATEUから既に作品を出していました。これも通受けはしたもののそこまで大ヒットではなかったと思うのですがそこをSTRETCH ARMSTRONがうまく引っ張り上げた感があります。
このシングルもBIG BEATの2年前に既にインディーであるMEL-O RECORDSから出ていました。
LOUDでのMOBB DEEPもそうですし、STRETCH ARMSTRONG自身のレーベルであるDOLO RECORDSの第一弾も既にベテランだったPOWERULEでした。なんかこう「引っ張り上げる感じ」があまりにもうまいので「このレコードもそうかなー?」なんて考えてしまうわけです。
ちょっと不確かなことばかり書きましたが「NY HIP HOPがラジオを通してどのように広まっていったのか?」ということがわかるドキュメンタリーが制作されるというのは非常に楽しみです。いろいろなプランが用意されているようなので参加してみても楽しいと思います!!
またYouTubeには彼らのラジオ番組の録音がたくさん上がっています。曲のかけ方なんかはとても勉強になります!!