買い付け行ったオハイオ州のレコード屋のおっさんから聞いた話です。
「60年代のSOULとかFUNKは同じ時代のROCKと分けて聴いちゃうとわかんなくなっちゃうよー」
まあどの時代でもそう言えると思うんですがLSDなんかが大流行した当時のものは特にそうなんだそうです。
あまり英語が得意ではないので半分くらいはわかったようなふりをしてしまいましたが、そのお店ではやたらROCKのレコードも買ってしましまいました。圧で押し切られるような形で。
麻薬はやらないので詳しいことはよくわかりませんがLSDというのは随分不思議な麻薬なんだそうです。合成麻薬であるだけに学者によって盛んに研究され薬局で販売されていた時代もあったためか大衆に急速に広まりました。
麻薬の善悪みたいなことについては述べませんが(法律で禁止されている以上はやめときましょうね)この不思議な麻薬の影響を受けたいろんな表現が産み出されました。GREATEFUL DEADやJIMI HENDRIX EXPERIENCE、THE BEATLESなどなど、音楽においてはROCKの傑作がたくさんあります。
で、レコード屋のおっさんが言うには「このころの音楽は特に人種が関係なかった」と言うわけです。もうかなり極端な言い方だと思うんですが「LSDでキマってたかどうかだ」と言い放つわけです。
「おっさんめちゃくちゃやなー」とは思ったんですが「なるほど」とも思いました。
「PSYCHEDELIC ROCKの名盤」みたいな特集はあちこちで見かけますので当店なりに選んでみたPSYCHEDELICなレコードを紹介してみたいと思います。
DENNIS COFFEY AND THE DETROIT GUITAR BAND/EVOLUTION
「RARE GROOVE」「SAMPLING SOURCE」 と言ったところで評価されるアルバムですがギタリストとしてのDENNIS COFFEYはかなりPSYCHEDELICなんだそうです。
この人はMOTOWNのハウスバンドだったTHE FUNK BROTHERSでギターを弾いていたそうです。THE TEMPTATIONSがNORMAN WHITFIELDの元でPSYCHEDELICな楽曲を発表する際にハードなギター(ディトーションとかファズですね)をセッションに持ち込んだ張本人だそうです。
そんなMOTOWNでの経歴を積んだ末にソロデビューし大ヒットさせた自身のアルバム。PSYCHEDELICなアルバムとして改めて聴くとまた違った聴こえ方しておもしろいですよ!
FUNKADELIC/CAN YOU GET TO THAT
FUNKADELIC/A JOYFULL PROCESS
FUNKとPSYCHEDELICでFUNKADELICなわけですから半分はPSYCHEDELICなわけですね。
元はDOOWOPグループだったわけですがEDDIE HAZELのようなギタリストも擁しこういったFUNKになったのも納得ですね。
これもPSYCHEDELICである。と言うことを頭の片隅に置いて聴くとまた違った聴こえ方します。
SLY & THE FAMILY STONE/STAND!
LSDやヒッピームーブメントが盛んだったサンフランシスコから出たバンドでSOUL〜FUNKはもちろんROCKに多大な影響を与えたこともあってPSYCHEDELICです。曲に込められたメッセージや人種混合の編成というのも当時はインパクトがあったそう。レコード屋のおっさん曰く「間違いなくキマってる」と。
MINNIE RIPERTON/LE FLEUR
これをすすめられたのはちょっと意外でした。
MINNIE RIPERTONが在籍したROTARY CONNECTIONはMUDDY WATERSのアルバム"PSYCHEDELIC BLUES"のバックで演奏していたから「間違いなくキマってる」と。そこからのソロ1作目ということでこの盤も「PSYCHEDELIC」なんだそうです。
調べて見ると当時のCHESS/CADETはPSYCHEDELICなROCKをマーケットとして重要視していたようでそう言った目的からROTARY CONNECTIONやMUDDY WATERS、HOWLIN' WOLFなどをPSYCHEDELICな音楽としてパッケージしてリリースしていたようです。
余談ですがこの7インチは"LOVIN' YOU"などがヒットしたのちにリリースされた盤。SIDE-AはPETULA CLARKの"DOWNTOWN"が収録されています。
CHAIRMEN OF THE BOARD/CHAIRMAN OF THE BOARD
INVICTUSレーベルにもPSYCHEDELICな質感を持った曲が多い気がします。
レーベルが立ち上がった時期が時期だけにというのもあるんですがMOTOWNにおいてTEMPTATIONSがPSYCHEDELICな路線で成功していたことは大きいんでしょうね。他の作品もそう言った視点で楽しめる作品が多くあると思います。
FLAMING EMBER/SUNSHINE
INVICTUSの兄弟レーベルであるHOT WAXから。
「もう普通にROCKのバンドでええやん」って感じでしょうか?SOULやFUNKといった音楽にまでPSYCHEDELICな雰囲気が浸透したところでこういうROCKバンドがHOT WAXから出ているのはなかなか興味深いです。BLUE EYED SOULとも呼ばれいろんなジャンルでのクロスオーバーが盛んだったことがわかります。DIAMOND Dがサンプリングした"GOTTA GET AWAY"とか"I'M NOT BROTHERS KEEPERS"みたいな「めっちゃ良い曲」も入ってますし。
LSDの話は置いておいても「PSYCHEDELIC」という名のトレンドの下にいろんな楽曲があるんですね。「ROCK」とか「SOUL」「FUNK」のようなジャンル分けは棚を作る上での便宜上必要ではあるんですがそこを跨いでいく価値観もしっかりあるのであまり固執しすぎちゃうといろいろと見落としてしまいそうです。
また「今までROCKはあまり聴いてなかった」みたいな人には今回挙げたような音楽を聴いてから「60年代ROCKの名盤」みたいな盤を聴くのもおすすめです。今まであった先入感は無しにしていろいろ聴いて見ると意外とどんなジャンルもすんなり聴けるようになるもんです。
オハイオのレコード屋のおっさんもそういことが言いたかったのかなーと(昔はドラッグやりまくりで楽しかった!みたいな話も多かったですけどね)。